08. 不動産の相続と相続税

2. 相続発生後の手続き

    相続開始の翌日からやるべき手続き

    ①すみやかに

    相続人の確定と財産・債務の調査

    • ・戸籍謄本で法定相続人の確定
    • ・遺言書の有無確認と裁判所で検認
    • ・財産・債務のリストアップ
    • ・遺産分割協議書の作成

    ②3ヶ月以内

    相続放棄・限定承認(家庭裁判所に申述)

    • ・相続放棄
       相続人は、被相続人の一切の財産および債務を相続しないことができます。
       (被相続人の負債が財産より多い場合などに行う)。
    • ・限定承認
       プラスの財産の範囲内で負債を承継することです。

    ③4ヶ月以内

    所得税準確定申告・納付(税務署に申告)

    不動産所得や事業所得などの所得税の確定申告は通常、翌年3月15日までに行いますが、個人が死亡した場合には、被相続人のその年1月1日から死亡の日までの期間の所得について相続人共同で確定申告(準確定申告という)しなければなりません。

    ④10ヶ月以内

    相続税の申告・納付(税務署に申告)

    分割が確定していないと適用できない特例があるため、この期限までに遺産分割協議が相続人間で調っていることが望まれます。この期限まで原則現金で納付しなければなりません。延納や物納をする場合もこの期限までに申請書を提出し許可を受けなければなりません。

    ⑤1年以内

    遺留分侵害額請求 (相続人・受遺者・受贈者に申立て)

    遺言によって遺留分未満の財産しかもらえなかった法定相続人は、遺留分を侵した相手に対して1年以内に「遺留分侵害額請求」を行うことができます。

    〈遺留分の割合〉
    • ・直系尊属のみが相続人の場合
       法定相続分の3分の1
    • ・それ以外の場合
       法定相続分の2分の1
    • ・兄弟、姉妹は遺留分はない

    ⑥3年10ヶ月以内

    相続税・譲渡所得税の特例(税務署に申告)

    相続税の特例適用申告
    相続税の特例である「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」の適用は、遺産分割協議の確定が要件となっています。申告期限(10ヶ月後)までに協議が決まらない場合は適用ができません。
    この場合「申告期限後3年以内の分割見込書」を申告期限までに提出し特例の延長をします。3年10か月以内に協議が調えば、その時に特例を適用を受けることができ、4か月以内に更正の請求をすることにより相続税の還付を受けることができます。
    所得税の譲渡所得の特例申告
    相続財産を譲渡した場合の相続税額の取得費加算
    相続財産を譲渡した場合、譲渡所得税の計算上相続税額を取得費に加算できる特例は、相続発生から3年10か月以内に譲渡が行われたとき適用されます。

    ⑦3年経過した12月31日まで

    空家の3,000万円(2,000万円)特別控除
    昭和56年(1981年)5月31日以前建築の被相続人の居住用家屋を売却した場合、3,000万円の特別控除が適用されます。(相続人3人以上のときは2,000万円)

    ※上記期日は相続開始を知った日から起算

    Q60遺産分割が10か月以内に成立しなかった場合の税務上の不利益は?
    兄弟間の話合いがうまくいかず、相続税の申告期限(相続後10ヶ月以内)まで遺産分割協議が調いません。相続税の申告期限までに遺産分割ができなかった場合、相続税への不利益はあるのでしょうか?

    A相続税が減額・軽減される特例などが使えなくなります。

    その主なものは以下のとおりです。

    1 小規模宅地等の特例」が使えない
    2 「配偶者の税額軽減」の適用ができない
    配偶者が相続した財産につき法定相続分か、1億6,000万円のいずれか多いほうの金額までは相続税がかかりません。遺産分割が成立していないとこの特例が利用できません。
    3 物納ができない
    相続税については、納税資金がない場合、相続財産そのもので相続税を支払う「物納」が認められています。遺産が未分割の場合には物納することができません。

    ただし、相続開始の日の翌日から3年10か月以内に分割される見込みの場合、申告期限までに「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出し、分割が確定したら、分割確定後4ヶ月以内に更正の請求書を提出して上記1.2の適用をうけることができます。当初の納税額が多すぎた場合には、その多い部分の税額が還付されます。

    Q61遺言書と違う遺産分割はできるか?
    父の相続が発生し、遺言書がありました。遺言書通りに分割すると相続税が過大になるだけでなく、相続税を支払うための不動産の売却も困難で、また母の生活資金の確保もできないなど不利益が多大です。相続人は全員話し合いで分割希望です。遺言書と違う分割はできますか?

    A遺言書がある場合でも、相続人全員(相続人以外に受遺者がいればその者も含む)が合意すれば、異なる方法で遺産分割を行うことができます。この場合、罰則等の適用もありません。ただし、相続人が一人でも反対した場合や遺産分割禁止(5年以内分割禁止ができる)が定められている場合はできません。また執行人が定められている場合は辞任してもらう必要があります。

    Q62相続財産は申告期限まで売却してはいけないのでしょうか?
    相続税の申告に際し、納税のため相続財産を売却しようと思います。相続税の申告期限まで売却すると適用できない特例とはどのようなものでしょう。

    A居住用・事業用・貸付用に使用される宅地には「小規模宅地等の特例」という特例があります。取得者の要件や面積の上限が定められています。居住用と事業用で80%、貸付用で50%の評価額減となります。この特例の適用に際し、相続人によって申告期限まで所有しなければならない制限があります。

    その主なものは以下のとおりです。

    1 居住用
    (80%減額)
    同居親族が取得した場合、は相続開始時から相続税の申告期限まで引き続き住み、所有しなければならない(配偶者は制限がない)
    2 事業用
    (80%減額)
    事業を引き継ぐ親族が取得した場合、相続税の申告期限まで所有していて、かつ事業を継続していること(相続開始前3年以内にその事業に利用した場合は対象外)
    3 貸付事業用
    (50%減額)
    親族が取得し、相続税の申告期限まで所有していて、かつ貸付事業を継続している(相続開始前3年以内に貸付事業に利用した場合は対象外)

    相続税の納税は原則現金納付ですが、納税資金が不足する場合、延納により納税を延長し売却後に納税するか、または一時的に金融機関等より借入して納税し、売却後返済する方法が取れます。